「うさぎは、寿命が短いから可哀想」
と思っていませんか。
うさぎは寿命が短いから、飼うとすぐにいなくなって寂しくなると思う人もいます。
でも、生物学の視点から見ると、全然短くないといいます。
どういったことなのでしょうか。
うさぎの寿命が短いから可哀想?
うさぎの寿命は、おおむね6年~7年。15年生きるうさぎもいますが、それは少数派です。やはり猫や犬と比べると寿命は短いのが一般的。
4、5年でシニア期に入っていきますから、猫や犬を飼いなれている人なら、何か物寂しい感じがします。
だから、うさぎは寿命が短いから可哀想と思ってしまう人もいます。
このことに関して、
「動物の一生を生きた感覚は皆一緒」という生物学の有名な説があります。
生物学者の本川達雄という大学教授が、「ゾウの時間ネズミの時間」という本の中で、このことについて書いています。
学者さんですから、理論的な説明から説得力のある内容。
人間からすると、時計のように絶対的な時間があるように思えますが、体内時計というべき時間感覚は動物によって違うというのです。
時間感覚は動物によって違いますが、当の動物たちからしてみれば、普通に時間が過ぎ去っています。速く感じたり遅く感じたりすることはありません。
ただ、客観的な基準を設けるとしたら、寿命の長い動物は時間がゆっくり進み、短い動物は速く進んでいます。
「寿命の長い動物は時間が速く過ぎ去り、短い動物はゆっくり時間が進まないと一生を生きた感覚は一緒にならないのではないか」
と思ってしまうかもしれませんが、違います。
例えば、人間としての24時間、1日があったとします。
人間は当然1日という感覚ですが、寿命が2~3年であるハツカネズミにとってみたら、30~40日ぐらいの時間感覚。
それで、人間もハツカネズミも一生を生きた時間感覚は一緒ということです。
この人の理論でいうと、人間もうさぎもゾウもネズミもすべての哺乳動物の一生を生きた感覚は一緒。
人間からみたうさぎの寿命は6、7年で短いと思ってしまいますが、うさぎからしてみれば普通の一生ということです。
その理論は?
体重が重い動物ほど心拍数が少なく、逆に軽い動物ほど心拍数が多い。
これは確かなことで、以下の通りです。
体重 | 心拍数 | 寿命 | |
ゾウ | 5トン | 30回/分 | 70年 |
ウサギ | 2キログラム | 250回/分 | 6~7年 |
ハツカネズミ | 20グラム | 600回/分 | 2~3年 |
寿命を考えると、体重が重くて心拍数が低いほど長生きです。一方、体重が軽くて心拍数が高いほど短命です。
この法則からすると、すべての哺乳動物は一生に心臓の打つ数は10億~20億回なんだとか。
つまり、心拍数と寿命を掛け合わせると、おおよそ一定になるのです。
10億~20億回は目安ですね。この数で必ず寿命を迎えるということではありません。人間の場合は、この20億回をゆうに超えます。
人類は食生活が改善して、医療も進歩して寿命を延ばしてきた経緯があります。
この心拍数一定の法則から、一生を感じる感覚も一緒なのではないかということが導かれています。
また、著書の中で、「時間は体重の1/4乗に比例する」という理論があります。
体重が重くなれば、時間の進み方も遅くなる、というのです。体重が10倍になると、時間の進み方が1.8倍長くなるという理論。
この理論は、小さい動物にとっては、時間は速く流れていて、大きい動物にとっては、時間は遅く流れているということです。
結果として、どの動物も一生の長さを同じように感じているという理論です。
この本は学者さんが書いているので、ちょっと難しいです。
おおまかに言うと、タイトルの「ゾウの時間ネズミの時間」から分かるように、私たちは、私たちの時間の中で生きて、動物たちは動物たちの時間で生きているということです。
さて、この理論を元にうさぎで当てはめて計算してみました。
ウィキペディアではうさぎの心拍数は、130–325/分です。平均で220で計算してみます。
220×1440(1日の分数)=31万9680(1日の心拍数)
319680×365=1億1668万3200(1年での心拍数)
すべての哺乳動物は一生に心臓の打つ数は10億~20億回ですから、平均で15億で計算すると、
15億÷1億1668万3200=12.85年
大きく外れではないですが、少し多いですね。
10億で計算すれば、8.5年ほどになって、うさぎの寿命とだいたい合致します。
まとめ
うさぎはうさぎの時間を持っているということですね。
人間の基準を当てはめると、6、7年の寿命は短いと思って可哀想と思ってしまいますが、そんなことはありません。
それぞれの動物には、その動物なりの時間を持っていて、一生を過ごす感覚は同じなんです。(おわり)