与謝蕪村。
江戸時代の三大俳人の一人です。他の二人は松尾芭蕉と小林一茶。
この二人ほど有名ではないですが、俳句の世界では有名人です。
この人、とっても綺麗なうさぎの句を詠んでいるんですよ。
美しい光景が広がるこの句を紹介します。
与謝蕪村の詠んだうさぎの句
与謝蕪村が詠んだ句に、うさぎが入っているものがあります。
「名月や うさぎのわたる 諏訪の海」
パッと見、そんなに美しいのかな?と思うかもしれません。一つずつ解説していきますね。
月明りの夜に諏訪の湖面をみると、キラキラと光っています。月の光が波に反射して、波がまるでうさぎが跳ねているよう。
イメージすると、そんなキレイな風景が広がります。
うさぎと月。
月にはうさぎが住んでいると、江戸時代よりもずっと前から語り継がれていました。ですから「月のうさぎ」も当然意識して作られています。
「月に住んでいるうさぎが、諏訪の海を跳ねて渡っているよ」と一気にファンタジーの世界にも入っていけるわけです。
そして諏訪は長野県にある湖。
諏訪「湖」ではなく、諏訪の「海」としたところがニクイ所。海と表現することで、一気に世界が広がります。
また、「月」と「湖」を対比させるより「海」と対比させた方が、分かりやすく美しいです。
さらに、「名月や」とあります。名月といったら、中秋の名月。
中秋の名月は、旧暦8月15日です。
すると、「うさぎ、うさぎ何見て跳ねる、十五夜お月さん見て跳ねる」を思い出すことが出来ます。
まさに、十五夜のお月さんをみながら、うさぎは跳んでいます。
この「うさぎ、うさぎ・・」の童謡は江戸時代に作られたようですから、この意味も俳句に込めているでしょう。
さらにさらに、この場所は諏訪です。
諏訪といったら、「諏訪の御神渡り」を思い出さないといけません。
これは冬になると湖面が凍結し、両側から圧力がかかることで、氷がせりあがって道のようにできる現象。
これは、諏訪明神の御使である「狐」の仕業だという俗信があります。
「冬には狐が渡って、秋にはうさぎが渡っているよ」。
こんな意味も含まれているわけです。
たった14文字でこれだけの意味を含ませて、世界を表現しています。
与謝蕪村は、さすがの実力者といったところでしょう。
あまり知られていない句ですが、うさぎ好きには知っておいてもらいたい句です。
さて、まるで絵画のような句を作ってしまう与謝蕪村。
それは、彼にはもう一つの才能があったのです。
与謝蕪村について
与謝蕪村は大阪出身の人。68歳で京都で亡くなっています。
生まれた当初のことはあまり分かっておらず、20歳の頃、江戸に行って俳句を学んだようです。
その後は、松尾芭蕉にあこがれて10年ぐらい同じ足跡を辿ったそう。
この人、絵も上手でした。ですので、旅の宿代として絵を置いていったそうです。(Wiki参考)
そうなんです。
もう一つの才能こそ、絵を描くことなんです。
だから、この人の句の特徴は、絵画的であること。
風景が脳裏にありありと浮かぶような句を得意とする人なんです。
「名月や うさぎのわたる 諏訪の海」
実際、この句も先に紹介した通り、綺麗な風景が脳裏に浮かびます。絵画的な句といえるでしょう。
終わりに、与謝蕪村の他の句も紹介しておきます。
- 「春の海 終日のたりのたり哉」
- 「さみだれや大河を前に家二軒」
- 「菜の花や月は東に日は西に」
この3つは有名です。
まとめ
与謝蕪村のうさぎの俳句を紹介しました。
「名月や うさぎのわたる 諏訪の海」
マイナーな句ですが、深く美しい描写が脳裏に浮かびます。
たった、14文字でロマンティックな世界へ導いてくれました。
心の中の宝箱にそっとしまっておきたい、そう思える句です。(おわり)