「うさぎにつのと書いてどう読むのだろう?」
そう思いますよね。
漢字で書くと「兎に角」、読み方は「とにかく」です。
ウサギにツノなんてありませんし、「とにかく」と使う場面ではうさぎもツノもまったく関係ないですよね。
今回は、この「兎に角」に焦点をあてて解説します。
「兎に角」の読み方と意味は?
タイトルにも書きましたが読み方は「とにかく」です。
意味は2つあります。
1つ目は、色々な事情や問題があってもとりあえずそれは置いておくことにして、現在問題になっていることについて言及する様子を言います。
「ともかく」や「とにもかくにも」とも言いますね。
例えば、「そういう問題もあるけれど、とにかくこれを解決しなければ始まらない」などと使います。
2つ目は、話題を変えるときに、話をとりあえずおくことです。それはさておき、という意味と同じですね。
例えば、「それはとにかく、あのことはどうなったかな?」や「あなたはとにかく、あの人のこういうところはダメだ」というように使われます。
つまり「兎に角」は今まで話していた話について保留するときに使われることが多いです。
由来や語源は?
「兎に角」は平安時代頃から使われていた言葉で、言葉の語源は「とにかくに」です。
これは、江戸時代頃までこの形で使われていたと言われていますよ。
意外と歴史ある言葉なんですね。
「とにかくに」とは、今と同じような意味で使われていたと言われており、「と」は「そのように」との意味があり、「かく」は「このように」との意味があります。
そこから考えると、当時は「とにかくに」は「あれやこれや」や「なんやかんや」との意味で使われており、そこから「それはさておき」などの意味で使われるようになりました。
面白いのが、現在では「兎に角」と書いて「とにかく」との読み方がされていますが、平安時代から江戸時代まではなんと、ひらがなで使われていた言葉だったのです。
今でも、「兎に角」と漢字で書く文章はあまり見ませんが、この漢字がつけられて読み方がなされるようになったのは、割と近代になってからなのです。
そうなると、余計に「なぜウサギのツノなのか」という疑問がわきませんか。
「兎に角」の漢字に何か意味があるのかというと、実は特に意味はありません。単なる当て字なので、本当に意味がないのです。
では、どんな言葉から当て字として引っ張ってきたかというと、諸説ありますが、仏教用語である「兎角亀毛」からきていると言われています。
「兎角亀毛」の読み方は、「とかくきもう」です。
意味は、兎に角が生えることも、亀に毛が生えることも、現実はありえない様であることから、現実にはありえないことを比喩として使われます。
さらに、実際にはないことをあるようなものとして言うときにも使われる言葉です。
そこから考えてみても、「とにかく」との意味の関連性はほぼありません。そのため、「とにかく」の「兎に角」は、単なる当て字であると考えられるのです。
しかし、なぜ元々ひらがなであったはずの「とにかくに」が「兎に角」の当て字が広まったのか、気になるところでしょう。
実は、「兎に角」の当て字が広がったのには、ある大文豪が関わっていると言われています。
その大文豪とは、夏目漱石。
旧千円のお札でも有名な大文豪で、『吾輩は猫である』や『坊ちゃん』で有名ですよね。
そんな夏目漱石が多用したことによって、この「兎に角」の当て字は広まったと言われています。
当時はインターネットもない時代ですから、それほど夏目漱石が爆発的な人気であったことが伺えます。
それから、当時も今と変わらず、広く知られてその言葉が定着するケースがあったことも分かりますね。
夏目漱石といえば、「I love you.」を「月が綺麗ですね」と訳したことでも有名ですから、その時代の新しい言葉を生み出す最先端だったのかもしれません。
ちなみに夏目漱石の「漱石」ですが、これは、中国の故事「漱石枕流」から取ったものです。「負け惜しみの強いこと、変わり者」という意味です。
「兎に角」漢字で使えたら素敵
夏目漱石が「兎に角」と漢字で使ったように、文中で「兎に角」と漢字で使えたら素敵ではないでしょうか。
兎も角も難しい漢字ではないので、さらっと文中に入っていると「おっ」と目を引きますよ。
ただし、使い方が間違っていると残念な文章になるので、必ず「それはさておき」というような場面で使うようにしましょう。
それから、様々な雑談のときに「兎に角」の語源や由来を話せると、博識なイメージもつけられますよ。
ただし、「兎に角」に関する情報をすべて話すとちょっとうざったい人になりますし、知識をひけらかすイメージになってしまうので、気を付けたいところです。
おすすめの紹介の仕方としては、「なんで兎と角って書くの?」という話題になったときや、夏目漱石の話題になったときに小話として話すとうざったくなりませんよ。
まとめ
兎に角、ウサギとツノは「とにかく」にはまったく関係がないってことですね。つまり、兎に角はありませんし、言葉の意味としてもうさぎは関連性が見つかりません。
まったく関連がないのに、漢字として使われるのは、日本の言葉の面白いところではないでしょうか。(おわり)