月にはうさぎが住んでいて十五夜に餅つきをするという言い伝えが、日本にあります。
小さい頃に聞かされた話ですね。
これは「ジャータカ神話」が由来とされていますよ。
うさぎの餅つきの由来、このジャータカ神話について紹介します。
ジャータカ神話とは?
月のうさぎ伝説の由来の1つとして有名なのはインドのジャータカ神話です。
「ジャータカ」という仏教でいう前世の物語で本生話(ほんしょうわ)とも言われます。
お釈迦さまが生まれる前の、人や動物であった前世の物語なんです。
547話があって、すごく長いんですが、その中に月のうさぎの話があるんです。
うさぎに関する部分を紹介しますね。
仲良く暮らすうさぎと狐と猿がいました。
3匹は自分たちが獣の姿をしているのはなぜだろうかと考えていました。
そしておそらく前世で悪いことをしたためだろうと考えます。そこで、せめて今から人のためになることをしようと話し合います。
この会話を聞いていた帝釈天(たいしゃくてん)が3匹に良いことをする機会を与えてあげようと老人の姿になって3匹のもとを訪れます。
老人の姿になった帝釈天は何か食べ物をくれるように頼みます。
そこで3匹は喜んで食べ物を探しに行きます。
猿は木登りをして果物や木の実を取ってきました。そして狐は魚を捕ってきました。ところが、うさぎは何も取れずに戻ってきます。
それで、うさぎは火を焚いて待っててくださいと言い残してもう一度探しに行きます。
ところが、やはり何も取れずに戻ってきます。これを見た狐と猿はうさぎのことをうそつきだと言って責め始めます。
するとうさぎは自分には食べ物を取る力がないので私を食べてくださいと言って火の中に飛び込みます。
これを見た老人は帝釈天の姿に戻り、兎のやさしい気持ちに感銘を受けて兎を月に上げました。
そうしてうさぎは永遠にその姿を月の中に残すことにします。
以上がジャータカに関する部分です。ちょっと悲しい物語ですが、このようなわけで月にうさぎがいることになったんですね。
十五夜の餅つきの由来
ジャータカ神話ではうさぎは日本のように月で餅つきをしていませんが、杵でついているという部分は中国神話からです。
弓の名手である「げい」という人物が、西王母という女神から不老不死の薬をもらいました。
ところが「げい」の妻である「嫦娥」がそれを飲んで月へ逃げてしまいました。月に行った嫦娥は、兎の姿に変えられて、罰として満月の日に薬を作るよう命じられました。
そうして、うさぎは杵を使って不老不死の薬を作っています。
ある日、1000年間修業をした1組のうさぎの夫婦がいて夫が玉皇大帝から天に呼ばれました。
その時に嫦娥の境遇を知り、気の毒に思って自分の4人の子供を嫦娥のそばにおいてあげようと考えます。
家に帰って相談すると妻も子供も最初は同意しません。
でも最終的にはお父さんの気持ちを汲んで末っ子のうさぎが天に行って嫦娥に仕えることになりました。
それで嫦娥と末っ子の二人が不老不死の薬を作っているということです。
中国では繰り返す月の満ち欠けが不老不死や再生の思想と合致してこの神話ができたのではないかと言われています。
この神話が日本に伝わった時にうさぎが月で作っているのは不老長寿の薬ではなく餅になったんです。
なぜかというと日本では満月のことを望月と呼ぶことがあるのでこれが転じて餅つきになったという説がありますよ。
ウサギに見える?
ところで、月の模様はうさぎが餅つきをしているといわれますが、そのように見えますか?
月を見ると白っぽい部分と黒く見える部分があります。
白はクレーターの多い高地であり、黒は低地です。それが模様になって見えるのですね。
月はいつも地球に同じ面を向けているので見える模様は変化しません。
世界中で同じ模様を見ているのに日本では「うさぎ」とされていますが、外国の人に「何に見える?」と聞くと様々な答えが返ってきます。
参考記事:月の模様が「かに」に見えるって?世界では他にどんな見え方がある?
これは国ごとに文化や思想が違うのでその影響を受けているのでしょう。(おわり)