うさぎがでてくる昔話に、「うさぎと亀」は有名です。
うさぎと亀が、よーいどん!で競争する話。
うさぎは楽勝で勝てると思って途中居眠りをして、亀は休まず歩いて先にゴールするお話です。相手が強くても着実に歩みを進めていけば、勝つことができるという教訓も含まれている話です。
このお話、日本で作られたと思いきや、海外のイソップ物語が元になっています。
江戸時代にイソップ物語が入ってきて、「伊曽保物語」として伝えられているんですね。それが、うさぎと亀の話の元となっています。
イソップ物語は海外のお話ですから、他の国にも伝わっているわけです。
アメリカにも、うさぎと亀のお話があるんです。これを紹介しますね。
海外版のうさぎと亀の話とは?
アメリカのジャーナリスト、ジョーエル・チャンドラー・ハリスの「リーマスじいやの話」。
この本は、1880年代のアメリカで出版されています。
うさぎと亀が山の麓まで競争する話が、この本の中にあるんですよ。
内容ですが、日本の話と同じように亀が勝ちます。
しかし、内容は少し違っていて、亀は策略を用いてうさぎに勝利するというもの。
真面目に無心に歩いて勝ったのではなく、策略を用いて勝っている点で違いがあります。
どのような話かというと、
うさぎと亀は競争をすることにします。でも競争するのは次の日。
そして、亀はやぶの中を走りたいと主張し、うさぎはそれを認めます。
競争当日。
スタート地点にいるのは亀の妻。
同じ亀だから、うさぎは見分けがつきません。
亀本人は、あらかじめゴール地点に行って待ち伏せしています。
そのままスタートするのですが、道中のやぶの中に亀の家族がいたるところに潜伏しています。
うさぎが声をかけると、その時、その時に近くにいる亀が返事をするので、一向にうさぎは亀を引き離せないことにいらだちます。
そしてやっとの思いでゴールすると亀本人がすでにゴールにいるので、がっかりします。
ユーモアのある点で、アメリカの国民性を感じられますね。
でも考えてみれば、アメリカの話も普通に勝負すれば負けてしまう相手に対して勝つ話。
どんなに勝てそうにない相手に対しても、あきらめずに全力を尽くすと勝てるいう意味では似ていますね。
リーマスじいやの話とは?
ジョーエル・チャンドラー・ハリスという人は、ジャーナリストの肩書きの他、民話研究者でもありました。
リーマスじいやのお話というのは、黒人の間で伝わる民話を物語としてまとめたものなんです。
口伝えで伝えられてきた話を彼が物語にして本にしたということです。
その中に、うさぎと亀の話があったのですね。
本の全体像としては、黒人のリーマスじいやが白人の坊やに黒人の民話を語るという形。
たくさん話があって、うさぎどん、キツネどん、クマどんなどが出てきます。
内容はアメリカらしくユーモアたっぷりです。
うさぎと亀の話だけでも、そんな感じが分かりますよね。
うさぎと亀の話では、うさぎは亀にだまされていますが、他の話ではずる賢くて悪いこともするのです。キツネどんやくまドンにいたずらなんかします。
さて、このお話、ディズニー映画にもなったんですよ。
名前は「南部の唄」。1946年発表作品です。
でも、この作品、動物を黒人や白人にたとえてみることができると考えられるということから、人種差別的な表現のとして捉えられるとして、好ましくないものとされています。
アメリカでは上映に規制がかかっているんですね。ですからDVDもありません。日本では、VHSとしてかつて発売されたぐらいです。
「リーマスじいやの話」の本も現在では発刊されていないので、手に入れにくい状況です。アマゾンで見てみたら中古で2500円程。
もう、この「リーマスじいやの話」の世界に触れる機会はないのかなと思いきや、意外にもディズニーランドで触れる機会があります。
ディズニーランドにあるアトラクションのスプラッシュマウンテンです。
スプラッシュマウンテンの世界観は、ディズニー映画「南部の唄」の設定になっています。
ですから、うさぎどん、きつねどん、くまどんがいますよ。
英語名ではそれぞれ、「ブレア・ラビット」、「ブレア・フォックス」、「ブレア・ベア」です。
人種問題で本や映画では見られないのに、ディズニーランドで見ることができるという不思議な現象。
ディズニーランドは「夢と魔法の国」ですから許されるのでしょうね。
まとめ
うさぎと亀のお話に似た「リーマスじいやの話」を紹介しました。
日本のお話と内容がちょっと違いますよね。
本や映画では、規制がかかってなかなか見られませんが、ディズニーランドで世界観に触れることができますよ。
ディズニーランドに行ったなら、
「スプラッシュマウンテンは、ディズニー映画の南部の唄の設定」
↓
「南部の唄は、リーマスじいやの話が元」
↓
「リーマスじいやの話の中に、うさぎと亀の話がある」
と思い出してもらえれば幸いです。(おわり)